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大阪地方裁判所 平成3年(特わ)1668号 判決 1992年11月13日

本店所在地

大阪市天王寺区北山町七番一号

株式会社

三好宝生堂

(右代表者代表取締役 三好正嗣)

(右代理人 三好正一)

本籍

滋賀県甲賀郡土山町大字大野二一七二番地

住居

大阪市天王寺区北山町七番一号

会社役員

三好正一

大正五年一月一九日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立石英生出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社三好宝生堂を罰金一億円に、被告人三好正一を懲役二年六月をそれぞれ処する。

被告人三好正一に対し、この裁判の確定した日から四年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社三好宝生堂(以下、「被告会社」という)は、大阪市天王寺区北山町七番一号に本店事務所を置き、また、同市中央区南船場四丁目一二番二号に営業事務所を置いて、美術工芸品の販売等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人三好正一(以下、「被告人」という)は、平成三年三月二九日に退任するまで、被告会社の代表取締役として業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、

第一  昭和六一年二月一日から昭和六二年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(一)記載のとおり一億三三三〇万一八七六円であったのに、架空仕入を計上するなどの不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和六二年三月三〇日、大阪市天王寺区堂ケ芝二丁目一一番二五号所在の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一〇一七万一七一四円で、これに対する法人税額が二一八万七五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右業年度の正規の法人税額五五五〇万二八〇〇円と右申告税額との差額五三三一万三〇〇〇円を免れ、

第二  昭和六二年二月一日から昭和六三年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(二)記載のとおり三億九一九六万一五四六円であったのに、前同様の不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和六三年三月二九日、前記の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二六六七万八七六五円で、これに対する法人税額が九四三万六八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納税期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右業年度の正規の法人税額一億六二八五万五七〇〇円と右申告税額との差額一億五三四一万八九〇〇円を免れ、

第三  昭和六三年二月一日から平成元年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(三)記載のとおり六億六三三四万一五〇一円であったのに、前同様の不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成元年三月二九日、前記の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四二五〇万五九〇四円で、これに対する法人税額が一五五四万六三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二億七六二九万七四〇〇円と右申告税額との差額二億六〇七五万一一〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

注・証拠末尾の括弧内の漢数字は、検察官請求番号を示している。

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の

(1)  検察官に対する供述調書二通(六四、六五)

(2)  大蔵事務官に対する質問てん末書一六通(四八ないし六三)

一  被告人作成の確認書二通(記録第二三-五号、同第二三-六号)(七七、七八)

一  三好スエの

(1)  検察官に対する供述調書二通(四六、四七)

(2)  大蔵事務官に対する質問てん末書一八通(二八ないし四五)

一  三好スエ作成の確認書五通(記録第二三-四号、同第二三-七号、同第二三-一〇号、同第二三-四六号、同第二三-四七号)(七六、七九、八二ないし八四)

一  坂井アツの大蔵事務官に対する質問てん末書二通(七〇、七一)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一三通(記録第二六-一号、同第二六-二号、同第二六-三号、同第二六-一九号、同第二六-五号、同第二六-六号、同第二六-七号、同第二六-八号、同第二六-一一号、同第二六-二七号、同第二六-一二号、同第二六-一三号、同第二六-一七号)(一〇ないし二一、二三)

一  大阪法務局登記官梶原周逸各認証の登記簿謄本、閉鎖役員欄登記簿謄本(六六、六七)(但し、いずれも被告会社関係のみで)

一  被告会社代表者作成の証明書(六八)(但し、被告会社関係のみで)

一  検察官事務官作成の捜査報告書(八)

一  大蔵事務官作成の証明書(青色申告書提出の承認取消についてのもの)(九)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二六-一四号、同第二六-一六号、同第二六-一八号、同第二六-二一号)(二二、二五ないし二七)

判示第一の事実について

一  被告人作成の確認書(記録第二三-三号)(七五)

一  大蔵事務官作成の証明書(昭和六二年三月三〇日に申告した申告書写についてのもの)(四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六一年二月一日から昭和六二年一月三一日までのもの)(一)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二六-一五号)(二四)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(昭和六三年三月二九日に申告した申告書写についてのもの)(五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六二年二月一日から昭和六三年一月三一日までのもの)(二)

判示第三の事実について

一  三好スエ作成の確認書二通(記録第二三-一号、同第二三-二号)(七三、七四)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成元年三月二九日に申告した申告書写についてのもの)(六)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六三年二月一日から平成元年一月三一日までのもの)(三)

(法令の適用)

罰条

被告会社 判示各罪についていずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも罰金は情状により免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人 判示各罪についていずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人の判示各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理

被告会社 刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)

被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社を罰金一億円、被告人を懲役二年六月

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し四年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、絵画等美術工芸品の販売を営業目的とする被告会社の代表取締役として業務全般を統括していた被告人が、昭和六一年二月から平成元年一月までの三事業年度に合計一一億八八六〇万円余の所得がありながら、絵画の実地棚卸をしないまま、架空仕入を計上するなどの不正の行為により、右所得のうち一一億〇九二四万円余の所得を秘匿して申告し、合計四億六七四八万円余の法人税を脱税した事案であり、脱税額は極めて大きく、ほ脱率も約九四・五パーセントと高率である。そして、脱税の動機は、絵画取引の不況期を経験したとはいえ、価格が高騰し、多額の利益が出た右事業年度に、実地棚卸も行なわないままで、かつ、架空仕入を計上するなどして、所得の大部分をいわゆる裏金として留保したというもので、犯情はよくなく、以上に照らすと、被告会社及び被告人の刑責は重く、とくに、被告会社の代表者であった被告人に対しては、実刑をもってのぞむべきであるとも考えられる。

しかし、被告人は、被告会社の代表者として、前記のように、多額の所得を留保したものの、その生活振りからも、遊興等の個人的な用途に費消した金員はほとんどないと認められること、また、被告会社においては、地方税を含めて、本件ほ脱にかかる本税、重加算税、延滞税のすべての納付を終えていること、さらに、被告人には、これまで前科はなく、個人経営に始まって、被告会社を設立し、事業の発展、拡大に尽力してきたことが認められ、本件摘発後、その直後を除いて事実関係を認め、また、業界での役職を辞任し、被告会社の代表者の地位も長男に譲るなどして、一線から身を退いて、本件を真摯に反省していると認められること、被告人は、現在七六歳と高齢であり、健康状態も芳しくないことなど、被告人及び被告会社のために考慮すべき事情も少なくない。

そこで、以上のほか、諸般の事情を総合考慮して、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予するのを相当と判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正損益計算書(一)

<省略>

修正損益計算書(二)

<省略>

修正損益計算書(三)

<省略>

税額計算書

<省略>

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